ミステリー小説『さまよう刃』ネタバレなしの感想

ミステリー、サスペンス小説

子供を持つ親として考えさせられた、非常に重く悲しく切ないお話。
紹介記事として、ネタバレなしで書き進めます。

さまよう刃』(さまようやいば)は、東野圭吾による長編小説。
これまで何度か映画化やドラマ化されている。
2009年、東映により、益子昌一監督、寺尾聰主演で映画化。
2014年、韓国においてEcho FilmおよびCJ E&M Corp.により、監督イ・ジェンホ、主演チョン・ジェヨンイ・ソンミンキム・ジヒョクで映画化。
2021年5月からWOWOWにより、片山慎三監督、竹野内豊主演でテレビドラマ化。

  • 長峰という男
    被害者の父親である長峰重樹が痛まし過ぎます。子を持つ親であるならば共感できるどころの騒ぎではありません。
    顔も知らない他人の理不尽な欲望の為に、大切な宝である我が子を汚され命まで奪われたと思えば、胸が張り裂けそうになります。
    そして加害者に少年法が適応されるならば、納得のいく罰則を与えられる事もできません。
    やり場のない「怒り」と表現するには生温い、言葉では言い表せない感情に支配されているはずなのに、出会う人々には本来の優しさを見せることができるこの人物が非常に物悲しく、ラストシーンまで終始「救われてほしい」と強く思いながら読み進めていました。
  • 絵にかいたようなクズな悪党
    長峰の娘を傷付けた男達のクズっぷりが半端ではありません。読んでいてムカムカイライラしてきます。今思い出しても腹立たしい。
    最後までクズなのです。
    それが凄くリアルに感じます。未成年の性犯罪者が少年法に守られて、果たして本当に改心して更生するのでしょうか?SNSを見る限り、そうは思っていない人は多数いると思います。
    この物語に登場する大人達も、終始その部分に疑問を持っています。
    クズ過ぎるがゆえに世の中のその疑問がハッキリと浮かび上がってきます。


この作品は、少年法による被害者の問題を、非常にリアルに描いています。
法治国家である日本においての倫理観と、親ならば持っていて当然の感情との間で、何が正義で何が正しい事なのか、未成年の犯罪と罰則について深い思索を促し、主人公に復讐を遂げさせてやりたいと思う一方で、これ以上罪を重ねて不幸になって欲しくはないという相反する思いが交錯します。

作者自身が『たぶん最後の御挨拶』の中で語っています

東野圭吾
東野圭吾

「仇討ちは違法である。しかし世の中には、それを認めてやりたいと思うような事件がある。仇討ちをしようとする者を、警察官たちは捕まえようとするわけだが、その本音はどうだろうか。そんな発想が、この作品を書くきっかけになった。少年法を扱っているが、それだけでなく、今の法律には、犯罪者を守るものが多いような気がしてならない」

随所に仕掛けられた伏線が収束していくミステリー要素があり、その完成度も問題なく、終盤のスピード感のある展開と、グイグイと読者を引き込む文章力に圧倒されたのですが、作品自体のテーマが重く、共感できる怒りと悲しみの印象が上回り、何とも言えない感情が沸きあがる読後感でした。

心に突き刺さる凄い内容でした。それがゆえに、「面白い!」や、「おすすめです!」とは、気軽に言う気分にはなれない作品でもあります。

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