十角館の殺人 1987年 著者:綾辻行人
非常に面白かったので、紹介記事として、ネタバレなしで書き進めたいと思います。
裏表紙より
半年前、凄惨な四重殺人の起きた九州の孤島に、大学ミステリ研究会の7人が訪れる。
島に建つ奇妙な建物「十角館」で彼らを待ち受けていた、恐るべき連続殺人の罠。生きて残るのは誰か?犯人は誰なのか?
はじめに
遅ればせながら、推理小説なるものに興味津々です。
その、きっかけになった作品が、この「十角館の殺人」でございます。
正確には、この小説を原作にしたドラマ版です。
大学のサークルの推理小説研究会の男女を中心に、ある孤島で起こる連続殺人事件、そこに半年前に同じ島で起きた、謎が残る四重殺人事件が絡まり、更に過去のある悲劇が交錯して…
等々、ワクワクする設定で一杯のミステリーです。
ある理由で映像化は不可能と言われていましたが、私が視聴した感想は、「お見事!」でした。
あまりにも素晴らしく、原作が気になってしまい、早々に文庫本を購入し、手に取った次第であります。
ドラマ版は、目立った改変もなく、原作を忠実に再現されていたとは思いますが、万が一の為に
小説版から入る事をお勧めしたいです。
ドラマ版から小説に入った私ですが、満足度は、順序が逆であっても変わらなかったと思います。
それほどドラマ版の完成度は高かったと思います。
ですが、やはり小説から入って欲しい。何故か?
その理由は、映像化不可能とされていたポイントと、時間からくる現在との、状況の違いとでも申しましょうか。
これ以上言及すると、楽しさが半減してしまいそうなので言えません。
ドラマ版から観るメリットもあります。私のように小説を読むことに慣れていない人間は、映像から入ると、設定やストーリーが頭に入っている状態なので、元々読みやすい小説が、更に読みやすくなります。そして、先の展開や結末を知っていても問題のない面白さが、確かにあります。
是非、映像から入るのか、小説から入るのかを、ご自身で判断して確かめて欲しいです。
何故名作なのか?
著者、綾辻行人のデビュー作で、当時22歳の若者の才能が鮮烈に輝いている作品。
発表から数十年経った現在でも非常に評価の高い作品で、海外のミステリーランキングに名を連ね、後のミステリー小説に多大な影響を与えた革新的な作品とされています。
何が革新的だったかと言うと、従来の本格ミステリーは、アガサ・クリスティやエラリー・クイーンのように、論理的な謎解きを重視してたのに対し、その手法を取り入れつつ、謎解きの面白さだけでなく、「物語の構成や語り口に新しい驚きを加えた」新本格ミステリーを確立したと言われています。
構成と伏線の張り方が美しく素晴らしいところが『十角館の殺人』が名作とされる理由の一つだと断言できます。本土と孤島という二つの視点で物語が進行し、そこに複数の時間軸での出来事が錯綜しています。読者は、それらから得られる複雑に絡み合う情報を紐解いて、推理をしながら読み進めます。
ある会話や行動の中に、後になって意味が変わるようなヒントが隠されていたかと思えば、ミスリードによって思わぬ方向へと導かれたり、徐々に明らかになっていく真相と今までに得たヒントを照らし合わせて推理を見直したりと、最後まで奥が深い物語を楽しむことができます。
更に、物語の構造自体が効果的なトリックとなって、あの時のあの人物の行動やセリフの意図が後々に気づかされる仕組みになっており、その思考の答え合わせのために読み返してしまう魅力もあります。
そして、読み返すうちに新たな発見があり…
琴線に触れたポイント
- 時代
作品の発表当時は現代だったのでしょうが、今となっては古き良きを通り過ぎて、憧れとノスタルジックな昭和でございます。大好きです。 - 魅力的なキャラクター
登場人物の背景や心理、性格や言動が、それぞれの個性が分かりやすく、一気に物語に引き込まれてしまいます。
そして、それが事件とそのトリックに密接に関わってきます。
特に孤島での惨劇を目の前にした緊張感により、その感情や思惑が交錯し、誰もが怪しく思えてくるという、推理物ならではの世界観に誘ってくれます。 - 閉鎖された孤島
外部から隔離された孤島、いわゆるクローズド・サークルが舞台です。迎えが来るのが一週間後。警察もいない。その閉ざされた島で、惨劇が起こります。誰が犯人で誰が真実を語っているのか。疑心暗鬼の中、緊張感のある展開が押し寄せます。
クローズド・サークル(closed circle)とは、ミステリー用語としては、何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品を指す。
過去の代表例から、「嵐の孤島もの」「吹雪の山荘もの」「陸の孤島もの」「客船もの」「列車もの」などの様に分類されることもある。
クローズド・サークルは密室の一種とされることも多いが、密室と非密室の境界を問題とする不可能犯罪ではなく、ドラマを室内に限定する密室劇である。
クローズド・サークルwikiより引用
- 絶妙な場面転換
ある日、推理小説研究会の元メンバーである、江南孝明に謎めいた手紙が届きます。好奇心旺盛な江南孝明は、手紙の謎を追い始めます。
孤島での出来事と本土での手紙の謎解きが同時進行で場面転換しながらテンポ良く進んでいくので、それぞれのエピソードが冗長に感じず、常にワクワクしつつ、読み進める事ができます。 - 読みやすさ
難しい言い回しや、冗長で退屈な状況説明等もなく、シンプルかつ洗練された文体で、非常に読みやすく、良いスピード感で読むことができました。
また、事件の謎や過去の出来事の真相が、徐々に明らかになっていくにつれ、先の展開が気になり、小説に不慣れな私でも、やめどきがなく最後まで一気読みをしたくなる魅力がありました。
まだ未読の方に強くおすすめしたい一冊です。



コメント